ピアノの森 237話 生涯のライバル

公開日:  最終更新日:2015/10/03

–予想もしなかったカイの優勝。想像もしなかったカイの願い–

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思いもよらない手術の提案に阿字野は・・

阿字野
「お話はわかりましたが・・でも・・
今すぐは何も考えられない・・
少し時間をください。
カイ、ありがとう。
でも・・おまえの大事な時間を使わせてしまって・・
本当にすまなかった。」

piano10

席を立ち、歩き出す阿字野をカイは追いかける。
「待って、阿字野!もっとちゃんと話がしたいんだ!」

阿字野
「うん。でも、今日は疲れた。」

カイ
「お・・怒ってるの?」

阿字野
「いや、怒る理由などどこにあるんだ。」

阿字野は確かに怒っていた・・
自分自身に。

翌朝、阿字野は公園からコンチネンタルホテルにかかっているカイのポスターを見ていた。

ジャンが阿字野に声をかける。
「こうしてみるとすごいよね!カイは・・
カイが壮介と連絡がつかないってショゲてたぞ。
かわいそうに、そのままリハーサルに出かけたよ。」

阿字野
「ジャンこそよくわかりましたねー、私がここにいるって。」

ジャン
「たまたまだよ!
僕だってコンチネンタルホテルにカイのポスターがかかって聞いたときに・・・
この公園からぜひ見てやろうと思ってね。
・・怒ってるのか?壮介・・」

piano11

阿字野
「そりゃあ、色々と怒ってますよ。特にあの医者・・」

ジャン
「ああ、あの条件だろ。サイテーだね。」

阿字野
「受けたカイもカイだ。」

ジャン
「そりゃあ、他のコなら受けないだろうけどさ!
でもカイだぞ。売られたケンカを買わないとでも?
壮介の手術がかかってんだぞ。」

阿字野
「だからこそ許せない。」

ジャン
「わかる。けど、手術の腕は超一流だそうだ。
嫌なヤツだとしても、それとこれとは別だぞ。」

阿字野
「ジャンにもダマされていましたし・・」

ジャン
「ああ、それは~。
カイとの約束だから、大目に見てもらえると~。」

阿字野
「でも、一番許せないのは・・自分自身です。
何も知らず、カイを奔走させていたなんて・・」

ジャン
「壮介・・気持ちはわかるが・・
カイに聞かなかったのか?
それもこれも壮介のためじゃなくて、カイ自身のためだって・・
僕はそう聞いているけどね。」

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フィルハーモニーホール。ガラコンサート二日目。
この日の目玉、カイの協奏曲1番。
カイが登壇する、その光景をみながら、阿字野は昨日のカイとのやりとりを思い出していた。

piano12

阿字野
「カイ、いったいつからそんなことを考えていたんだ?」

カイ
「それは・・
ジャンのリサイタル2人で聴きに行った時から・・・
阿字野の手が・・ピアノを弾きたがっていると思ったから・・
阿字野はそんなこと考えてなくても・・・
あれだけのピアノを弾いていた手は、指は、舞台に立ちたがってると思ったんだ・・」

阿字野は自分が許せなかった。
カイを守ってきたつもりでいたのに、一番大事な時期に重荷を背負わせていた自分が。
”なんてマヌケな話なんだ”

コンサート前にカイと話した際の回想。

阿字野
「カイ、一つだけ聞きたい。
どうしてカイのピアニストとしてのこれからに、私が復活することが不可欠なんだ?」

カイ
「それは・・俺には絶対阿字野が必要だってわかったから・・」

阿字野
「カイ・・もうおまえは私の手を離れて次の段階に・・」

カイ
「うん、それはわかってる。
先生は阿字野でなくてもいいし、離れることも納得してる!
阿字野はもう自由だよ。
だから・・決めたんだ。
阿字野には先生じゃなくて、
生涯のライバルになってもうらう・・って!」

阿字野
「フッ、何を言うかと思えば・・」

カイ
「どうして?俺のピアノの原点は・・
阿字野なんだよ。
誰の・・どんな素晴らしいピアノを聴いても・・
俺が憧れ、その存在を越えたいと思うのは・・
阿字野だけなんだ。
あの凄かった阿字野の映像を越えることを・・
俺は生涯の目標にしようと思ってたんだ。
でも気づいたんだよ。
ホントはあのピアノにはその先があったことを!
だったら聴きたいと思った!
俺はそうしてもその音が聴きたいと思ったんだ!!」

カイの演奏が終わり、観客席は総立ち。

アンコールの声に応えて、カイが演奏しはじめる・・前に、靴を脱ぎだした。
はだしで演奏をし始めた!

カイ
(阿字野、これが俺の・・原点のピアノ。)

カイがアンコールに、いかにも得意そうに、オケを伴って弾いたのは・・
”茶色の小ビン”

piano13

観客席の雨宮修平は号泣している。

阿字野
(この曲は・・森のピアノのそばにいたくて小学校の音楽教師になったとき・・
それでも自分らしい授業をしようと、初めてアレンジした曲だ。
森で初めて聴いたカイのピアノも、この曲だった。)

そして、阿字野は朝、ジャンに言われた言葉を思い出した。
「壮介、日本だけじゃないぞ。
男の子は父親を越えて初めて1人前になる・・って言葉があるのは・・
おまえはカイの越えなきゃならない大きな壁なんだそうだよ。」

piano14

–237話ここまで

○感想

カイの本当の気持ちを知った時、阿字野は立っていることすらできませんでした。
幼いころからカイを守り、その才能を引き出してきた阿字野は、やはり、カイにとっては父親だったんですね。
そのことをカイが阿字野に伝えるとき、父親という言葉をライバルに変換しました。
別の先生を持ち、離れることになっても、どうしても阿字野とつながっていたい・・
カイの気持ちが切ないです。

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